「文書」と「記録」
前前回のコラムで、「アーキビストはレコードマネジャーも兼任?」と題して、ドキュメント(文書)、レコード(記録)の違いについて述べました。
読者の皆さんのなかには、「文書」と「記録」を、厳密に区分できるのか疑問に思われた方もおられたのではないでしょうか。
ISOの9000シリーズや14000シリーズの認証や実践に少しでも関与された方なら、「文書」「文書化」「記録」という用語がいたるところで出てきて、その要求にきりきり舞いさせられた、という経験をお持ちでしょう。
ISOでいうところの「文書」とは、私たちが一般的に使っている「文字で表した書類」というような意味あいとは違い、「品質マネジメントシステムや環境マネジメントシステムに関係する書類や、仕様書、手順書、図面、報告書、規格」などのことを限定的に指し示しています。
さらに、「記録」とは、「達成した結果を記述した、または実施した活動の証拠を提供する文書」と定義されています。受け入れ検査の記録、作業日誌、点検記録、発注書などが、「記録」にあたります。
両者の関係は、例えばマニュアル(文書)に従って、結果を付ける(記録)というように単純化できますし、行為や規制の手段となる文書と、その対象になる文書(=記録)と言い換えてもいいでしょう。
ここまで述べてくると、「文書」と「記録」の違いがおわかりいただけるでしょう。
すなわち、前者が、書き換えることが出来るのに対して、後者は、書き換え不可能ということです。
記録管理の世界標準・ISO15489が2001年に制定され、我が国では、2005年にJIS化されました。
ここでは、
●文書(ドキュメント)
一つのユニットとして取り扱うことの出来る、記述された情報または対象物。
●記録(レコード)
法的義務に従い、あるいはビジネスの実務において、組織または個人により証拠や情報として作成され、受領され、且つ維持される情報。
と定義されました。さらに、記録の要件として、真正性、信頼性、利用性、完全性を求めています。
この標準に則って、品質や環境面に限らず、職場で文書や記録がきちんと作成されているか、活用されているか、保存・廃棄がなされているか、第三者によってチェックされる時代が、近いうちにやってくるかもしれません。