7月9日「大学の歴史を伝えるもの」
明治の「御一新」から140年余り、新しい知識をとりいれて新しい国づくりに役立つ人材を育成するべく設立された大学が、創立120年、130年という節目を迎えています。
弊社でも、大学アーカイブズのサポートをさせていただいておりますが、「建学の理念」がきちんと継承されて活かされているか否かは、大学の評価に直結することですので、大学の歴史の継承には、どちらでも力が入れられています。
東京の主要大学は、築地や神田界隈にそのルーツをもつところが多いようです。築地は明治初期、外国人居留地が置かれ、キリスト教の布教という「ミッション」を負った外国人宣教師たちがミッションスクールを開きました。立教や青山学院、関東学院はここにルーツがあります。
神田界隈は、官庁街に近く、校舎に転用できる武家屋敷が立ち並んでいたことから、学校が集中しました。
日大、明治、法政、中央などがこの地に生まれています。
各校とも競うように「発祥の地」記念碑を建立して、その長い歴史を誇っています。
専修大学は、発祥の地・銀座に記念碑がありますが、このたび神田神保町の敷地の一角に、明治時代の正門を原寸大で復元しました。この門は、1885年(明治18年)に前身の「専修学校」がここに移転してきたときに使われていたもので、東大の「赤門」に対して「黒門」と呼ばれ「黒門」と言えば専修学校を意味したといいます。
一角には当時の写真と解説文を掲載したパネルを設置し、また路面には近くを走っていた都電の敷石を用いて、大学がこの地で歴史を刻んできたことを伝えています。
明治時代の「門」の復元とは前代未聞ですが、大学の歴史と伝統を、今の学生や教職員はもちろん、近隣の人や通りすがりの人たちにも効果的にアピールするものと言えるでしょう。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。