日本のアーカイブズの問題点(2)
前回、日本のアーカイブズの問題として、現用文書の管理と非現用の歴史的文書の管理がバラバラでつながっておらず、充実したアーカイブズを構築する仕組みができていない点について述べました。
これは基本的に組織内で文書のライフサイクル管理という考え方が理解されていないということに他なりません。
つまり現用文書としての作成、活用、保存、処分(移管又は廃棄)というプロセスを経て歴史的文書が永久保存されるという仕組みの重要性が認識されていないことを意味します。
しかしながら、もう一つの大きな問題として、このようなライフサイクル管理の仕組みを担当する専門職(現用段階ではレコードマネジャー、非現用段階ではアーキビスト)の職能が確立されていないことが挙げられます。
この点も実はグローバルスタンダードと大きな乖離が認められる部分なのです。
海外の先進国では官民を問わず、大きな組織の場合、レコードマネジャー、アーキビストという両分野の専門職がいて、連携して文書のライフサイクル管理に責任を持つという体制が組まれています。
またそこまでいかない場合でも、少なくともレコードマネジャー、アーキビストのどちらかが存在し、片方がもう一方の分野を兼務するという方式を取る組織が多く見られます。
日本では前回述べたように、恒久的なアーカイブズ機能(体制・施設)を持つ企業・自治体は極めて少数で、せいぜい社史編纂室や自治体史編纂室といった時限的な体制しかない所が多いのです。
このような体制では、正式なアーキビストが採用されることはまずありません。
そのため社史・自治体史が発行されるとその体制そのものがなくなり、せっかく集めた資料もどこかへ散ってしまうというケースが少なくありません。
やはりレコードマネジャーやアーキビストというプロフェショナルの専門職がいなくては、このような文書のライフサイクル管理を確実に、しかも継続的に行うことは難しいのです。
言い換えると部門任せではなく、専門的な知識や経験を有する専門職が各部門を指導・推進・支援する体制がどうしても必要だということです。
たとえいくら良いルールが出来たとしても、これを実行に移す体制がなければうまく行かないのです。
アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。