カナダ国立図書館・公文書館 訪問記
昨2011年10月、アメリカの国立公文書館と共に、カナダの国立図書館・公文書館(Library and Archives Canada: LAC)を訪問し、その最新の活動を視察してきました。カナダは国会図書館と国立公文書館を合併し一つの組織にするという、世界でも先端的な取組みを行っている国です。
双方とも国民共有の知的資源を保存し、国民の利用に供するという共通の役割と使命を持つ、知の殿堂です。世界的にMLA(Museum、Library、Archives)連携と称して博物館、図書館、公文書館という3つの組織の機能や活動の連携を進めようという動きがありますが、カナダは一歩先を行っていると言ってよいでしょう。
そしてカナダ連邦政府各省庁の記録管理・アーカイブズ全般を取り仕切っているのがLACです。
基本的にLACは各省庁の記録の保存、廃棄についての承認を行います。
つまり各省庁は、LAC館長の承認がなければ記録を廃棄できないのです。
LACの新しい取組みで、印象的だったのは、2017年以降、LACは各省庁からの公文書の移管を電子記録でしか受け入れないという方針を決めたことです
従って、各省庁は今まで紙と電子のどちらかでLACへ移管していたものが、17年以降、電子でしか移管できなくなるわけです。なぜ2017年かというと、この年がカナダの建国150周年のアニバーサリー・イヤーだからだそうです。
アメリカの国立公文書館の「電子記録アーカイブズ」(ERA)といい、カナダのこのような移管の完全電子化といい、世界はアーカイブズの電子化に向けて加速化しているようです。
アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。