福岡共同公文書館の開館
昨年(2012年)11月18日、県と市町村が共同して設置・運営する公文書館が福岡県筑紫野市にオープンしました。これは福岡県と県内全市町村(福岡市と北九州市除く)が共同で設置・運営する公文書館で全国初の取り組みです。
これにより、県内自治体の歴史公文書を適切な環境で保存するとともに、それらを一元的に管理することが可能となり、さらには平成の大合併において危惧された市町村の重要文書の散逸を防ぐことができるとされています。
開館前日の11月17日には開館記念式典と国立公文書館・高山正也館長による記念講演会が開催されました。2011年4月施行の公文書管理法により、各自治体の公文書管理も国と同様の施策を講ずるようにという努力義務が課せられていますが、そのポイントの一つが公文書館の設置によるアーカイブズの拡充です。
その意味でこの事例は今後の自治体アーカイブズ設置のモデルとなる、まことに画期的な試みと言えるでしょう。と言うのも各自治体が個別に公文書館を設置するには、財政的な課題及びアーキビスト等の人材確保の課題などかなり困難なハードルが存在します。
このように地域の自治体が協力し合って公文書館を設置するならば、これら困難なハードルを越える有力な処方箋となると思われるからです。
この福岡共同公文書館は6130平方メートルの敷地に、地上3階延床面積5421平方メートルの建物からなり、その内、2516平方メートルが文書保存庫で約90万冊の公文書が収蔵可能ということです。
明治以降の歴史資料として重要な公文書を住民の共有財産として適切に保存し、未来に残していくことを基本的な使命としていますが、今後の成果が注目されます。
アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。