磁気テープのデータ保存で安心?
日本経済新聞に、「磁気テープ」がデータ保存の有効性がある記録メディアとして、再評価されているという記事がありました(※1)。
2011年3月の東日本大震災後、企業や団体ではBCP(事業継続計画)の確立が急がれるようになりましたが、重要データの保存媒体として、何がベストなのか、さまざまな論議がなされてきました。
磁気テープは、オフラインの状態でも使用でき、運用コストも低廉で、記録メディアとして実用化され50年以上も歴史があるという安心感がある、という利点があります。
では、アーカイブズの「永久保存性」という側面で、この磁気テープは有効と言えるのか否か、考えてみたいと思います。
磁気テープは、CDやDVDなどの光ディスクよりは、長期保存に適していると考えられています。しかし、他の各種記録媒体と比べると、決して長期保存に適した媒体であるとは言い切れません(※2)。
公文書館等の資料保存を専門とした機関では、写真フィルムと材質が同系統のマイクロフィルム(COM)での保存に信頼を置いています。
マイクロフィルムを含む写真フィルムの安定特性を規定する規格が、米国国家規格協会(ANSI)から既に出版されています。
他の国々でも相当する規格が国内標準として制定されており、永久保存性を持つ媒体とした記述がありますが、磁気テープには長期保存条件での保管は示されてはいるものの、永久保存の特性を示した記述はありません。
このように考えると、磁気テープでデータを保存するのは、ある程度のスパンの中長期保存、また活用しやすいという点で有効性があるということで、必ずしも永久保存に直結した特性があるわけではないものと考えられます。
どの記録媒体を利用するかは各組織の予算や資料の活用方法に委ねられます。今後、一層コストが低く、物理的劣化のスピードが緩慢で、なおかつ活用しやすい記録媒体が、どのような形で出現し、普及するのか、動向を見守りたいと思います。
※1:エコノ探偵団「磁気テープなぜ復活? 生産量3年連続プラスに」(2013年6月8日付)
※2:米国国立公文書館A.Calmes氏のデータによると、各種記録媒体の保存性として、一定の保存条件を満たした上で、紙(250~700年)、フイルム(COM:500~900年)・フイルム(カラー:30~250年)、磁気テープ(30年)、磁気ディスク(20年)、光ディスク(20年)と報告されています。光ディスクは実際に10年程度という見方もあります。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小根山 美鈴
都内の大学史編さん室、独立行政法人の研究所でアーカイブズの業務に従事の後、現職に至る。日本アーカイブズ学会会員。