モノ資料の魅力
今年2014年は、新幹線 (東京・新大阪間) が開業して50周年の節目です。これを記念しておびただしい数の新幹線関連の書籍が発売されています。それらのなかで、注目を集めているのが、廣済堂出版『新幹線 トレジャー・ボックス』です。14,000円もする高価な本には、列車に取り付けられていた列車名プレート、開業前の試乗切符、開業記念パンフレット、開業日の新聞紙や記念絵葉書など全20点の、 モノ資料のレプリカと、工事着工から開業までの5年6カ月を追った記録映画のDVDが付録としてついています。「この歴史的国家事業を振り返りニッポンの元気を取り返すため」に「新幹線」に関するあらゆる資料を 約二年間かけて収集し、厳選し、当時を彷彿とさせる文字通りの「トレジャーボックス(宝箱)」として売り出されたのです。
これらの「お宝」資料は精巧に復刻されているとはいえ、レプリカ(模造品)ですから、それ自身の「価値」は、それほど高いとは思われませんが、鉄道ファンのみならず、幅広い層の人が買い求めている そうです。モノ資料の魅力と言うのは、大きいものだと改めて思います。モノ資料は、文字だけでは伝わらない、さまざまなモノを伝えることができるのです。
モノ資料は、モノを言わないけれど、それが生まれた時代の、さまざまな情報や「ムード」を雄弁に伝えてくれます。新幹線が、ごくありふれた日常の交通機関となった今、 「夢の超特急」とよばれ、新時代の幕開け に胸をときめかせた人たちの、新鮮な喜びや驚きを、少し黄ばんだ紙面、少し色褪せた印刷物、レトロなキャッチコピーから、 追体験してみることも、意味があるのではないでしょうか。
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 中川 洋
歴史系博物館学芸員として資料の収集・管理や展示・教育業務に携わり、現職に就く。
現在は、企業および学園アーカイブのコンサルティング、プランニング、マネジメントに従事。