これからが正念場、記録管理の法律案
「公文書等の管理に関する法律案」が去る3月3日(2009年)に、第171回国会に提出されました。これは、昨年11月4日に内閣総理大臣に提出された 「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」の最終報告「時を貫く記録としての公文書管理の在り方 ~今、国家事業として取り組む~」を基に政府内で検討がなされてきたものです。この法案が、この国会で成立するかどうか、民主党の動向と絡めて注目されています。今回は、この問題の幾つかの基本的背景を押さえておきたいと思います。
無いと言っていて後から出てきた薬害エイズ資料や防衛省の航海日誌改ざん、宙に浮いた5千万件の年金記録と、資料・記録に関わる事件は枚挙にいとまがありませが、一体この問題の淵源はどこにあるのでしょうか。
まず第一に、省庁が日頃作成している文書(現用文書)の保存・廃棄に関わる権限は、その省庁にあり、最高30年の保存期間を過ぎても、歴史資料を扱う国立公文書館 に移行する制度が確立されていないことが挙げられます。
第二に、この各省庁の現用文書の総元締めが総務省であり、非現用文書の総元締めが内閣府という縦割り行政で横の連絡が密でない問題があります。国立公文書館の専門官が、各省庁に出向き、非現用文書の移管を要請しても、実際に移管されるのは全体の数パーセントと言われます。
第三に、市民等の公開請求による情報公開法が2001年に施行されましたが、この法の及ぶ範囲は、「行政文書」と命名される現用文書のみで、非現用の文書 すなわち「公文書」は、対象外なのです。加えてその行政文書すら、請求によって公開されようにも、そもそも作成や保存・廃棄に関わる文書そのものを扱う法律がないので、都合が悪ければ簡単に「文書不存在」とされてしまうのです。この点米国は、1950年に連邦記録法、1966年に情報自由法が定められており、記録と公開が、いわば車の両輪として機能しています。
今回の法律案によって、現用と非現用の扱いが一貫したものになる、と言われています。報道は(朝日新聞、2009年5月2日)、連休明けに与野党協議に入る、と伝えましたが、政界も風雲急を告げています。政争の具とならないよう、「時を貫く記録」がきちんとその使命を果たせる法律を作って欲しい、と願わずにはいられません。