米国国立公文書館 訪問記
この10月(2011年)、ARMA東京支部の有志とワシントンで開催されたARMA年次大会へ参加したついでに、アメリカの国立公文書館(National Archives and Records Administration:NARA)を訪問、記録管理の最新状況を視察してきました。
ここでは、筆者の友人である元NARAのディレクター、マイケル・ミラー博士の紹介のお陰で、幸運にもNARAのディビット・フェリエロ館長に会うことができました。
館長には、ワシントンの官庁街でも一際、壮麗な石造建築であるNARA本館の館長室でお会いしました。
米国国立公文書館館長といえば、The Archivist of the United Statesと称され、大統領が直接指名する連邦政府の高官ですが、実に気さくにわれわれに対応してくれました。
オバマ政権の方針である透明性と「開かれた政府」推進のため、NARAとしても政府情報、特に機密情報の開示には並々ならぬ決意で取り組んでいる様子でした。
情報自由法は、いうまでもなく法務省の担当なのですが、このように国の記録保管人(The National Records Keeper)といわれる国立公文書館が、積極的に協力しているのがアメリカの特徴です。
また、現在のもう一つの大きな取り組みは「電子記録アーカイブズ」(Electronic Records Archives : ERA)です。これは、もはや使われていないソフトにより作成され、すでに読み取る機器も存在しない電子記録を永久に読み取り可能にするというプロジェクトです。
2012年の終りには、連邦政府のすべての省庁(275ある)が、このERAを通じて記録のやり取りができるようになるということでした。
これに関連して力を入れているのが、大統領府からの電子メールの保存です。すでにブッシュ大統領の電子メールは2億1千万通を保存、オバマ大統領のメールは10億通にも達すると予想しているとのことでした。
館長との対話で特に印象的だったのは、この建物の前庭の彫刻の台座に刻まれた言葉、「過去は前触れである」(Past is Prologue)を引用して、いわれた次の言葉です。
「このように人々は常に過去から学ばねばなりません。記録は過去を文書化したものです。しかしながら人々は過去から学ばず、何度も何度も同じ過ちを繰り返しています。」
アーカイブ研究所所長 小谷允志
記録管理学会前会長、ARMA(国際記録者管理協会)東京支部顧問、日本アーカイブズ学会会員、日本経営協会参与、ISO/TC46/SC11(記録管理・アーカイブズ部門)国内委員。
著書に『今、なぜ記録管理なのか=記録管理のパラダイムシフト』(日外アソシエーツ)など。