アーカイブズの肖像権ガイドライン
アーカイブの資料を公開・活用する際、避けて通れないのが「著作権」と「肖像権」をクリアすることです。
「著作権」は知的財産権の一つで、「著作権法」によって権利が定められています。申請・登録等の手続なく、著作物が作られた時点で「自動的」に付与されるルールとされています。
それに対し「肖像権」は、法律による規定はなく、判例上認められている権利です。アーカイブでは写真や映像資料等を公開する場合に肖像権処理が必要となりますが、肖像権の侵害は解釈に委ねられているため、その判断がとても難しいものとなっています。判断がつかないものは非公開、とされていることも多いと思われます。
こうした問題に対応するため、デジタルアーカイブ学会が2019年11月に「肖像権処理ガイドライン(案)」(※1)を公開しました。
「肖像権ガイドライン(案)」は、裁判所が肖像権の適法性の判断を行う「総合考慮」の6要素(※2)を参考に、「ポイント計算」によって写真の公開の適性が判断できるように作成されています。(映像は情報量が写真以上にあるため、今回のガイドライン案では想定されていません)公開可能な要素はプラス点、公開に適さない要素はマイナス点で点数加算ができ、合計点によって公開適性を判断します。ステップのフロー、点数計算リストもあり、アーカイブの現場担当者が判断しやすいガイドラインとなっています。ただし、企業アーカイブに多くある広告・ポスター写真などの場合は、起用された著名人との契約、制作上の著作権の問題などがあるため、一概には判断ができません。
このガイドライン案には、「パブリシティ権」など、関係すると思われる権利が未反映な部分もあり、今後も検討継続が予定されています。今後の実用化に向けたさらなる議論が期待されます。(※3)
※1
デジタルアーカイブ学会「肖像権処理ガイドライン(案)」
(http://digitalarchivejapan.org/bukai/legal/shozoken-guideline)
※2
「肖像権ガイドライン(案)」によると、「総合考慮」の6要素は、以下の6点。
①被撮影者の社会的地位、②被撮影者の活動内容、③撮影の場所、④撮影の目的、⑤撮影の態様、⑥撮影の必要性
※3
2020年2月15日に「第2回肖像権ガイドライン円卓会議in関西」が予定。
(http://digitalarchivejapan.org/4177)
ヘリテージサービス事業部アーカイブ担当 小清水 萌木
大学図書館で司書として、レファレンスや図書資料整理に携わった後、現職に至る。